眠れぬ王子の恋する場所
「おまえ、見る目ないんだな」
事実ではあるものの、デリカシーのない言葉に少し傷つきながら苦笑いで答えた。
「ですね」
「女から金とって逃げるとかありえねーだろ。そのうち男にいいように騙されて壺とか買わされそう」
馬鹿にするように笑われ、ムッとする。
「別に騙されやすいわけじゃないですし。好きな人だったから……色々、見えなくなっていたり大目に見ちゃってただけで。
そもそも、お金を盗ったのがその彼ともわかりませんし」
お金を貸してほしいとはたしかに言われたけど、犯人が元彼だとは限らない。
……まぁ、高確率でそうではあるんだろうけど。
元彼は、いい部分だってある人だった。
むしろ、付き合っている間はいい部分しかなかったから、お金を盗んだのは状況からして元彼だろうと思いながらも、どこかで納得できない自分もいる。
残業で残っている私にわざわざ飲み物を差し入れてくれたり、給料日には決まって私の好きなケーキ屋さんでお土産を買ってきてくれたり……幸せな時間だってたしかにあった。
たくさん優しくしてくれた。
それなのに、最終的にあんな終わり方を迎えてしまったことはとても残念だけど。
私の悪口を言いふらすなんて、なにか事情があったんじゃないかって考えたくもなるけれど、それをしても事実は変わらないし、と、もやもやし出した胸の内の煙をため息で逃がす。
「警察の人だって、身近な人って言ってただけで、その彼だとは言ってないし……それに、別れたのだってどちらかが悪いって問題でもないですし。仕方ないことだったのかなって」
当時は色々混乱してしまってなにも考えられなかったけれど、落ち着いた今ならそう思える。
少しは吹っ切れたってことなのかな、とひとつため息を落としてから久遠さんを見て笑った。