60%でスキップ~1ヶ月日記・2017・4~


 あれ?ここは病院ですよね?それも、精神の。

 そう思った私はきっと埴輪顔だったはずです。何しに来たって、何しに来たと思ってるのだ。先生とお茶飲むために来たんじゃないぞ。

 この主治医、私の高校3年の時の担任の男性と似てるんですよね~。最初みたときに、「うわああー!先生やー!」と思いました。それで慣れるのも信頼をもつのも早かったのかも。そういうことって多分大事ですよね。

 で、薬がなくなりそうなんで来ました、というと、ふーん、ですってよ。

 しばらくカルテをじーっと見てましたけれど、その内言うんです。あなたの目標はどこなんですか?って。どういうことだ、と思っていると、先生は言いました。

「精神疾患をもっている人は皆目標があるんだよね。例えば多いのは、社会復帰すること、家事が出来るまで回復すること、みたいにね。でもあなたは家事育児にはもう何の心配もかげりもなくやれているし、学校行事や法事みたいなイベント事は怯えはしても行けてるよね。発作もしばらく起きてないし、40度まで出してた熱も数年なく、出血性膀胱炎も1年ほどないでしょ?アルバイトとはいえ仕事にもいけていて、ご飯も食べられるし不眠でもない。薬も完全にコントロール出来ていて、減薬も最終段階。それって一般的な精神疾患を持っている人の中では、ほぼ治ったといえると思うんだよねー」

 って、そのようなことを。

 私の目標は勿論、いかなるパニック障害の症状も出なくなるくらいまでの回復です。公共機関を利用するのに一々緊張せず、イベント事があっても平気で過ごせるような状態。呼吸困難?何それおいしいの?のレベルです。

 だけど、先生が言ったんです。

「それって普通の健康な人でも何かしらある『苦手』なレベルだと思わない?子供が歯医者を泣いて嫌がるのや、高所恐怖症を持っている人、それと同じだと思えない?」

 ・・・思えるわー!

 ハッとしました。うちの子供も歯医者は死ぬほど嫌がるし、娘は蜘蛛恐怖症で蜘蛛を見つけるたびに泣いたり嘔吐したりするんです。だけど、彼女は精神疾患ではない。もしかして私もそれと同じ?

 病気になる前は高所だろうが閉所だろうが狭小空間だろうが平気でした。人がたくさんいる場所はワクワクしましたし、イベントごとは大好きでした。だからそこまで、元の自分まで戻れるはずだって思ってましたけど、先生はアッサリ首を振るんです。

「一度病気になったら、元には絶対戻れないからね」

 って。


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