種無しスイカ
「とっとと立てよぉ!!!!」
そのまま立たされ、無理矢理引っ張られた。
連れて来られたのは黒いバンの中。
これ、絶対拉致されるじゃん。
バンが勢いよく走り出した時、一瞬だけ、ほんの一瞬。 櫻木さんと目があった。
バンの窓の向こう側に、冷たく睨むように立っていた。
私はその時、助けが来ないことを覚悟した。
揺られながら考えていたことは、あの日の事だ。
あの日も今日みたいに、私は知らない男に囲まれてた。
私がどれだけ抵抗しても、何も変わらないことは分かってる。
二度と思い出したくなかったあの過去が、今日、また現実に起こるんだ。