種無しスイカ





「とっとと立てよぉ!!!!」



そのまま立たされ、無理矢理引っ張られた。



連れて来られたのは黒いバンの中。



これ、絶対拉致されるじゃん。




バンが勢いよく走り出した時、一瞬だけ、ほんの一瞬。 櫻木さんと目があった。




バンの窓の向こう側に、冷たく睨むように立っていた。



私はその時、助けが来ないことを覚悟した。



揺られながら考えていたことは、あの日の事だ。



あの日も今日みたいに、私は知らない男に囲まれてた。



私がどれだけ抵抗しても、何も変わらないことは分かってる。



二度と思い出したくなかったあの過去が、今日、また現実に起こるんだ。





 
< 38 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop