エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「これはひどい……」

 自転車置き場の惨状を見た二階堂さんは、さっきの私と同じように絶句した。

「あのオレンジのやつが和宮さんのでしょう? 君がここにいたらと思うと、心臓が止まりそうだ」

 彼の指さす方向には、目の高さほどに積まれた、壊れた自転車の山があった。
 真ん中くらいに、オレンジ色の自転車が無残な姿をさらしている。

「幸い、誰もここにはいなかったらしくて。自転車はめちゃめちゃですけど、けが人はなかったみたいです」

「それを聞いてほっとした」

 他人の心配までしてくれるなんて。
 しかも、オレンジの自転車が私のだということを、ちゃんと覚えていてくれた。

 一流の営業マンは、そういう些細な部分での気配りもちゃんとできるんだな。

 あらためて、仕事ができる人の資質を知った気がする。
 それに、女心をときめかす理由も。
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