エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 オフィスに戻ると、ちょうど二階堂さんが外回りに出るところだった。
 自転車のことは知っているのだろうか。


「二階堂さん……あの……」

 遠慮がちに話しかけてみる。
 無邪気に笑顔を返してくる彼の姿を見て、心が痛んだ。

「さっき自転車置き場にトラックが突っ込んだらしいんです。それで、二階堂さんの自転車も壊れたかもしれなくて……」

「ええ!?」

 彼は目を見開いた。

 タイミングを間違えたかな、と少し後悔する。
 仕事の前に、こんなふうにショックを与えるようなことを言ってしまうなんて。

 きっと、大事に乗っていたのだろうと思う。
 彼の自転車はピカピカに磨きあげられていた。


「一緒に来てもらえますか」

 青い顔で、二階堂さんは言った。
 管理人の説明を聞きそびれたので、事故の詳細を知りたいのだろう。

 私は総務課にいたほかの社員に留守のあいだを頼み、二階堂さんとともに外へ出た。
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