エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 バス停から少し歩いたところに、小さなパーキングがあった。
 一台のスポーツワゴンに風間くんがリモコンキーを向け、ピピッとロックを外す。

 紫音と風間くんが車に乗り込むと、車のエンジンがかけられ、再びガチャリと車がロックされた。

 ――あれ?
 私はこの車に乗るわけではないのだろうか。

 不思議に思いながら車の傍らに立っていると、ウィーンと音を鳴らして窓が開き、紫音が顔をのぞかせた。

「私と風間、ちょっと買い出しに行ってくるから。桃ちゃんと淳司は先に体育館に行っててくれる?」
「あ、うん」

 反射的に答えを返す。
 紫音と風間くんの乗った車は、軽快なエンジン音を響かせて走り去って行った。


 残された私は、きょろきょろとあたりを見回す。
 するとこっちを見ていた二階堂さんと目が合った。
 にっこりと笑いかけられ、つられて笑顔を返す。

「えっと……二階堂さんの車はどれなんですか?」
「車? 一応あれだけど」

 彼が指さした場所にあったのは、水色の自転車。
 しかも、荷台のついたママチャリだ。
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