エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 しばらくすると、二階堂さんがこっちに向かってやってきた。
 心臓がドキリと跳ねる。

「ちょっといいかな」

 紫音と並んで座っていたベンチの横に立つと、彼は深刻そうな表情でそう言った。
 声をかけた相手は、私ではなく紫音だったけれど。

「ごめん、桃ちゃん、待っててね」

 紫音は食べかけの弁当にふたをしてベンチに置くと、二階堂さんと一緒に松林の奥へ歩いていった。


 お弁当のおかずをつまみながら、チラリとふたりの方向に目を向ける。
 会話の内容は聞こえないけれど、なんだか深刻そうな雰囲気だ。
 紫音が二階堂さんに向かって、なにやら怒っているようにも見える。

(もしかして、私のせいかな……)

 見た目がいいうえに誰にでも気さくな二階堂さんは、彼女にしてみたら、やっぱり不安が尽きないのかもしれない。
 いくら私が紫音の友達だからといって、自転車で二人乗りをしたり、ドリンクボトルを預けられたと知ったら面白くはないだろう。


 私は小さくため息をつくと、目の前に広がるキラキラした海を見つめた。

 そのとき、ある光景がまぶたの裏によみがえってきた。
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