エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「藤谷さんと別れろって?」

「あの人、はっきり言って二階堂さんにはふさわしくないです。二階堂さんだけじゃなく、みんなにいい顔するし。男だったら誰でもいいんじゃないですか?」

 かわいい顔をしているのに、ずいぶんきついことを言うのだな。
 それが正直な印象だった。

 紫音が私の友達であるということを抜きにしても、陰口を言う人は好きじゃない。
 でも、それだけ自分に自信があり、二階堂さんのことも本気なのだろう。

 屋上で向かい合って立っているふたりは、ドラマみたいにお似合いの美男美女だった。
 紫音も確かに美人だけれど、紫音と二階堂さんは、甘い恋人同士というよりむしろ仲のよい友達同士のようにも見えた。

 それに紫音は、同性の友達は少ないけれど、彼女の言うように男性社員とは仲が良い。
 だから『男だったら誰でもいい』と、悪意をこめて紫音の噂話をする人がいることも知っていた。

 はっきり断ってほしい。
 祈るような気持ちで成り行きを見守る。

 すると、二階堂さんは少し間をあけ、静かに言った。
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