エリート御曹司が過保護すぎるんです。
「僕と彼女は別れられないんだ。お互いの親にも会っているし……だからごめん」

 告白した女子社員の顔が、屈辱で歪む。

「そんなに藤谷さんのことが好きなんですか」
「うん、好きだよ」

 告白をちゃんと断ったという安堵感と、彼の口から出た「好きだよ」という言葉のショックで、胸の奥が苦しくなる。

 誰にでも優しいけれど、やっぱり特別なのは紫音だけなのだ。
 ひそかに温めていた私の恋心は、その一瞬で枯れてしまった。


 封じ込めていた記憶がよみがえり、私は箸を置いた。
 ベンチでお弁当を食べているといういまの状況は、あのときとよく似ている。

 勘違いしちゃだめなんだ。
 それに、もしこの気持ちをふたりに知られてしまったら、私は友達までも失ってしまう。
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