エリート御曹司が過保護すぎるんです。
 扉を開けたまま、ふたことみこと会話をする。

 食べ物を届けるという役目を果たしたあと、みんなのところに戻るのかと思いきや、二階堂さんはそこに立ったままだった。

 なにか問いたげに、私の顔をじっと見つめている。
 そしてあたりをキョロキョロと見まわすと、部屋のなかにするりと入り、後ろ手にパタンと扉を閉めた。

「桃ちゃん、悪いんだけどさ、少しのあいだかくまってくれる? ほかの支社の連中にめちゃめちゃ酒を勧められて、困ってるんだ」

 二階堂さんは、日に焼けた顔をさらに赤く染めながらそう言った。
 どうやら、すでにかなりの量を飲まされたらしい。

「いいですよ。キャプテンも大変ですね」
「ほんとだよ。仕事の情報交換をするはずだったのに、あいつら仕事の話なんかそっちのけで飲んでばっかりだし」
「それはそうですよ~」

 くすくすと笑ったら、また二階堂さんがあの片えくぼの笑顔を見せた。
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