子犬男子に懐かれました






「お客様のご契約ですとーー」


……やっぱりすごい

上司の仕事ぶりを横で見て、必死に話法を盗む。


「ありがとうございます!
では次お会いできるのはいつが宜しいでしょうか」


もう次のアポを取っている

入社当初は必死で友達の友達とかに攻めまくってアポを取りまくってたのに……全く初対面の方からアポを取るってなると、難しい……。


「私、もっと頑張らなきゃダメですね…今日の見てたらもっとそう思いました」


「さっちゃん」


優しく、けど強い口調で、


「入社1年目で次々とアポ取ってこれる社員なんていないのよ。

営業は、すぐに出来ないものよ、どんどん先輩のを見て、盗んで、特に保険の営業は10年くらいでやっと一人前なんだから。焦らなくていいのよ」



……焦らなくて、いい

なんだかずっと胸の奥にあった、焦り、不安などが一気に取れた気がした。


同期は香と2人だけという事もあって、香には売り上げ負けたくないという気持ちもあった。



「さっちゃんは気にしすぎ。頑張り過ぎなのよ…あんまり無理しないでね」


「はい…ありがとうございます」



営業ならではの、契約を取ってくるという不安がずっとあった。


だけど、

「あたしが0にはしないから」そう上司に言われ、涙が溢れ出そうになった。


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