君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
何も言わずに難しい顔をして、どうしたんだろう?

「よし」

よし?

何かを覚悟したように言うと、また扉の方に向かい、今度は本当に出ていった。

い、今のは一体…?
カナトに触れられた頭に、同じように手を置いてみる。

びっくりした。
今になって心臓が早まりだす。

最後に見たあの背中を思い出して、また顔が熱くなる。
かっこよかったな…。

「んーー!」

誰もいない部屋で、手で顔を覆う。
絶対今の私、顔赤いよ。

胸から溢れる思いを落ち着かせよう息を深く吸う。

「…落ち着かないよ」
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