君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「だから、私は何も知らないんです!
ここから出してください!スパイなんかじゃありません!」

地下の牢獄に囚われた私は、スパイの容疑をかけられていた。
石の壁で囲まれたこの牢獄に、逃げられそうな隙は微塵も無い。

それに加えて、私を捕えた隊長は全く聞く耳を持ってはくれない。

「黙れ。あんなところでこそこそとしやがって。
城に侵入する準備でもしていたんだろ!ドルツのスパイめ!」

「違います!」

高い緊張感が支配する中、身の潔白を示すのは難しい。
事情を話したところで、信じてもらえるわけもないだろうし…。

私の命は今、この隊長さんの手の中に握られている。

「ではあの小屋で何をしていた?」

「それは…」

言い訳ができない。
下手にカナトの名前を出したら、それこそ今すぐに撃たれそう。
彼はこの国の王子。気安く名前を出してはいけないはず。

< 38 / 173 >

この作品をシェア

pagetop