君に捧ぐは、王冠を賭けた愛。
「でも遠くからだったからあんまり見えなかった。

だから今度は僕の為だけに歌ってくれる?」

思わずドキッとする。
だって、カナトが自分の要望を言ったのは初めてだから。

いつもリンタールのこと、国民のことを考えての願いを語っていた。

私は、カナトにも笑顔でいてほしい。

「何の歌がいいか考えておくね」

気恥ずかしさを隠して、見つめ返した。
身長差のせいで、自然と上目遣いになる。

いっつも私ばっかりドキドキさせられてるから、たまにはこういうのもいいよね。

「…っ」

カナトは目を丸めて驚いてる。
かと思うと、みるみるうちに耳まで赤くなっていく。

「その顔は…、反則だ」

そっと手のひらが頬に触れる。

やばいって。
カナトこそ反則だよ。

まるで時が止まったかのように、何の音も聞こえなくなる。
ここには二人しかいないよう。
< 67 / 173 >

この作品をシェア

pagetop