初雪の恋

 そんな私を見て、海斗さんの動きが止まる。


 「どうした?」


 海斗さんの顔を見ながら


 「海斗さん。助手席に女の子乗せて、彼女に怒られない?」


 「お子ちゃまはそんな、大人的な心配はいりません。てか、今いないし彼女。だから、とっと乗れ。」


 再び車に促す海斗さん。


 「お子ちゃまじゃあないし。」


 頬を膨らませながら、車に乗りこむと、私がシートベルトをするのを確認して、ゆっくりと車を発進させた。


 緊張して、なにを話していいのか分からず、車内は静まり返っていた。


 「紗姫眠いなら、寝てもいいぞ。」


 「大丈夫。ただ初めて、海斗さんの車に乗ったから、事故しないか、心配なだけ。」


 せっかくのデートなのに寝てしまうなんて、もったいない。


 すると、左手をハンドルから離して、私の方に伸びてくる。


 「い゛だぁぁい゛。」


 右頬を海斗さんに摘まれた。


 「お前いい根性してるな。ごめんなさいは?」


 うっっ。本当に痛い。涙目になりながら、素直に謝った。

 やっと離してもらった右頬を、さする。


< 29 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop