強がり女の唯一の男
「あのね・・・公平は私にとって都合のいい男なんかじゃないの」
「だったら、俺の方が池上の役に立てる!」
「今まで安達君にはたくさん仕事上でアドバイスをもらったわ。 それには感謝してる。
だけど、付き合っていなくてもこれからも意見交換できると思う」
「そうかな・・・やっぱり親密だからこそっていうのがあったんじゃないか?」
「かもしれないけど・・・公平は私にとってかけがえのない存在で、安達君とは違うのよ」
「・・・何? 今そんな事言うのずるいよ。 今まで幼馴染だって言い続けてきただろ?」
「かけがいの無い幼馴染よ」
「俺とは別れることができても、坂口さんとは離れることができないって事か・・・」
「公平と会うことをやめるなんて出来ない」
私の弱い部分を素直に曝け出せる貴重な存在。
「本当は坂口さんを好きなのか?」
「そんな風に思った事無いわよ・・・」
今までは・・・。
「坂口さんと付き合いたと思った事は?」
「一度も無い」
今までは・・・。
「そうか・・・それを聞いて安心した」
今まで私が公平と会っていたのは、幼馴染以上の感情を持っていたからなのか? と疑ったの?
「公平の事は関係無く、私が安達君を好きだと思えなくなったのよ。
だから別れてください。 お願いします」
電話なのに私は深々と頭を下げている。
「分かった・・・今は何を言っても池上の気持ちが変わることはないと思うから・・・」
安達君はそう言って静かに電話を切った。
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