強がり女の唯一の男
16話
その日の帰りに今度は可愛い女性に呼びとめられた。
「池上さん・・・あの・・・」
数日前の帰宅時間に安達君と話をしていた女性だとすぐに分かった。
きっと、安達君の相手の女性だと思う。
でも、電話での印象よりずっと儚げな人だと思った。
「どちら様ですか?」
私は初対面らしく、彼女を見ず知らずの人という風を装った。
「あの・・・先日は、電話で失礼いたしました」
小さな声でそう言って頭を深く下げた。
「あの電話の方ですか?」
私が訊くとゆっくりと頷いた。
< 92 / 159 >

この作品をシェア

pagetop