EGOIST
ダンテがここへ来るということは、彼がエレンの生きる世界へ踏み込むという事だ。
エレンは、ダンテ自身が思っているほど彼が弱いとは思ってはいない。
寧ろ、自分の側に来たとて彼は平気な顔をしているだろうと思っている。
しかし、ダンテが自分の側に来れば、表と裏を行ったり来たりと常人とは違う生き方をしているものの、それでも確かな平穏のある日常が音を立てて崩れることになる。
それが、エレンは嫌なのだ。

所詮これはエレンの我儘でなんの拘束力はない。
だから何かを言う権利もない。
だから、この感情に意味はない。

と、その時電子音が響いた。
それは3人がつけていたインカムからのようだ。
エレンからは彼らが何を言われているのかは聞こえない。
しばし3人はインカムから聞こえてきているであろう誰かの声に耳を貸していたが「了解しました」と金髪の少女が返した。

「呼び出しですか?」
「えぇ。まだ誰も来ていませんが、そろそろ準備をしていろと」

「では失礼しますね」と3人はその場を去った。

1人になったエレンは目を閉じた。
そして大きく息を吸い、吐き出す。

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