EGOIST

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フェアファクスの名はスマラクトローゼの表舞台に出てくることはなく、その名が有名になったのはつい数十年の事である。
それも現当主であるヒュー・フェアファクスが、自身が起こした会社を一代で大手企業にまで育て上げたという、本来の役目とは関係のない形で、である。

だが、裏社会でその名を知らない者はなく、御三家でさえフェアファクスを無視することはできない。

フェアファクスの役目は、裏と表の均一の維持。
スマラクトローゼにおいて裏と表は切り離すことが難しいほどに密着している。
裏社会がなくなれば、この国が揺らぐと言われるくらいに。
そのため、裏を完全消滅させるのではなく、表社会を侵食しないよう、監視し、時には手を下す。
それがフェアファクスの役目である。

時折警察では手に負えないような事件の解決や解決への助力も行い、警察からはそちらが主だと思われているが、それはあくまで副業に過ぎない。

この役目は主に当主の役目とされ、必要以上に露呈することを避けるため、知人友人はもちろん、その兄弟、子供、孫にも伝えることはないという徹底ぶり。
また、跡取りは素質のあるなしで決められる。
そのため必ず嫡男が継ぐ物ではなく、場合によっては甥や孫が継ぐ、ということもしばしば。

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