スーパーアイドル拾いました!
「真(まこと)、起きなさいよ! 遅れるよ!」
 すでに柚奈の三回目の声だ。


 やっと、ガタガタと音がして、制服に着替えた真が機嫌悪そうにテーブルに座った。
 テレビのリモコンに手を伸ばした後、ダラダラと朝食のゆで卵を食べ始めた。

 テレビに映る朝の情報番組は、人気アイドル桐嶋海斗(きりしまかいと)が、朝から可愛いニュースキャスターと笑顔で番宣をしている。


「やった! 又、海斗のドラマ始まるんだ。もう、三十七歳だって。益々、男の魅力出てきてたまらん!」
 柚奈は、明るく声を上げたが……

 真の返事はない…


 人気の若手俳優が、次々とテレビの画面に映り、柚奈は益々テンションが上がった。


「わー。今日は朝からいい男が見られて、一日頑張れそうだわ!」

 柚奈はニコリとし、小さくガッツポーズをした。


「そりゃ、単純な人は幸せでいいわ」


 真は、呆れたように言葉を吐くと、食べ終わった食器を流し台に入れた。


「私、今日遅番だけど」


「僕、今日部活だから」


「じゃあ、帰りは同じくらいだね」


「多分…  いってきます」


「いってらっしゃい! 気を付けて!」


 いつもと変わらない朝…



 柚奈は、食事の片づけをさっと済ませ出勤の支度に急いだ。

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