スーパーアイドル拾いました!
 柚奈は、車椅子を押しながら、スロープを渡り外へ出た。

 まだ、暑さもそれほどでない、朝の風が気持ちよく柚奈と梅田の頬を通り過ぎた。


「柚奈さんの好きな人は、どんな人?」


「えっ。梅田さんには、特別に教えちゃおうかな? 嘘みたいな話なんですけど、アイドルなんですよ…… でも、すごく純粋で、しっかりした人なんです」



「おやおや、大変な事だこと……」


「本当に……」


「柚奈さんは、人から好かれる事が多いだろうね……」


「そんな事は無いですよ…… 」



「多分…… 自分で気が付いていないだけだよ……」


「まあ…… 梅田さんにそう言ってもらえるだけで嬉しいですよ……」


「ねえ、柚奈さん…… これから先、もし、迷う事があったら、自分が信じた人についていけばいい……  安定だとか穏やかな暮らしだとかに惑わされず、ちゃんと胸に手をあてて、信じてる人は誰なのか? 思い浮かべればいい…… 真君も、もう解ってくれる歳だよ……」


「梅田さん?」


 柚奈は車椅子にブレーキをかけ、梅田の前へ行き屈んだ。


 柚奈の顔を見ると、梅田はそっと手を出した。

 柚奈が、両手でそっと梅田の手を握ると、優しくほほ笑んだ。



「柚奈さん…… ありがとう…… 柚奈さんに会えてよかっ……た…… 幸せになりな……さ……い……」


「梅田さん! 梅田さん!」


 柚奈の声に、梅田は答えず、笑みを浮かべたまま、手の力が緩くなった……



 柚奈は慌てて、胸のポケットからPHSを取り出した。


「すぐ、ドクター呼んで!」


 柚奈は、何度も梅田の名を呼び、手を摩った。

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