スーパーアイドル拾いました!
 近くの喫茶店に入ると、山中と言う男はすぐに分かった。


「もっと、早くご挨拶に伺おうと思っていたのですが、遅くなってすみません」

 山中と言う男は、紳士的に名刺を出しきちんと挨拶をしてきた。


 名刺を見て、海斗のマネージャーだと分かった。


「いえ……」


 柚奈は、山中の向かいに座った。




「真君、合格おめでとうございます。海斗も凄く喜んでました」


「えっ。どうして、ご存知なんですか?」

 山中は、一枚の振込用紙を出した。


「取りあえずの入学金を、そちらに振り込みましたので、使って下さい」



「どういう事で?」
 柚奈は面食らって言った。



「真君と約束したんです。僕は、真君に投資しようと思ってます。勿論、真君には貸すと言う話になっていますが、真君が立派な医者なると信じているので、返してもらうつもりはありません…… でも、あくまでも、真君には貸すと言う事にしておいて下さい」


「さっぱり意味が……」


「いいんです…… これは、僕と真君との契約なので……」


「でも……」


 ウェートレスがコーヒーをテーブルに置いた。


 山中はゆっくりとコーヒーを口にした。


「しっかりした息子さんですね……」


「えっ?」


「あなたの事、よく見ている。一人でよくここまで立派に育ててこられて…… 大変だったでしょう?」


「あっ……」


 どうしよう…… 


 今まで、一度も涙なんか見せなかったのに……


 目が熱くなって、ポタリとしづくが落ちた……


「そんなあなただから、海斗も助けられたのかもしれません…… 海斗の気持ちが良くわかります……」


「えっ?」


 柚奈には、さっぱり解らない事ばかりだ……


 柚奈は、聞きたい事ばかりなのだが、山中は深い説明はせずに席を立ってしまった。


 海斗はどうしているだろう?


 それすらも、聞けなかった。

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