マーメイドはホテル王子に恋をする?!
「…花梨」


背中から彼が肩にキスを落とす。
少しゾクッとして振り向くと、イケメンな顔が直ぐ横にあって。


「誰にどんなふうに呼ばれてもいいけど、花梨と呼び捨てにする男は俺だけにしろよ」


お義父さんも駄目だからな…と呟く。
意外にも心の狭い彼に微笑み、本当に子供みたいだと思った。



「はーい(王子様)」


最後の言葉は言わずに胸の中にしまった。
背中を抱いた彼とキスを深めながら、これからもたまに胸の中で呼ぼうと決めた。



次のホテルは山の中だ。
星が降るように見えるらしくて、今から楽しみで仕方ない。


「…あ。そうだ。皆から貰った波のCDを入れないと!」


彼を押し離して探しだす。

マーメイドは井の中を飛び出すけれど、何処に行っても故郷の海を忘れない。



「これか?」


「そう。それそれ」



波のように寄せて返そう。

彼への愛も同じように。





完結


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