好きですか? いいえ・・・。





カバンがブーブーッと震えた。スマホは基本的にマナーモードにしている。メールやLINEだと一度しかバイブが鳴らないようになっているけど、これは長い。多分、電話。



カバンから取り出してスマホの画面を見ると、お母さんからだった。



「もしもし、ごめん! 仕事が長引きそうで、ちょっと遅れるかも……あ! ごめん! 切るね!」



ツーツー。虚しい音が右耳に響いた。



「誰から?」



「お母さん。」



「お母さんなんだって?」



「仕事が長引いて、迎えが遅くなるって。」



「そっか……毎日送り迎えしてもらってるんだね……。」



私の家は母子家庭で、お母さんと二人暮らし。お母さんは、週6日介護ヘルパーの仕事をしていて、今はその給料で何とか暮らせている。迎えが遅いくらいで文句は言えない。ただでさえ、医療費でお金を使わせてしまったのに、そのくせ送り迎えをしてもらっているなんて……できたらバイトでもして、少しでも家計を助けたいけど、生憎そうもいかない。今は自分のことで精一杯だ。



「よし! わかった!」急に落合くんが立ち上がった。



「オレが財満さんの家まで送ってやるよ!」




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