好きですか? いいえ・・・。





「ちょっと何ムキになってんの?」



「別にムキになってませんけど?」



「なんか怒ってるじゃん。オレなんかした?」



「別に怒ってないってばっ!」



「……怒ってるじゃないですか。」



でもホント。何怒ってんだろう、私……。50人いれば10人が違う意見の人もいる。だから、私の意見も正しいし、落合くんの意見も正しいのだ。そんなことわかっているのに、自分と違う考えを持っているってだけで、こうもイライラしてる私って、ホント器が小さい。



落合くんはいつもより早起きして、私をこうして学校まで連れて行ってくれてるって言うのに……。ホント、私って最低。



「ごめん。怒ってないよ。でも、ちょっと悲しかったかなー。」



「なんで?」



「だって、私、スナノのファンだもん。ううん、大ファンって言ってもいいと思う。まだ……。」



まだ……自分の脚で歩けていた頃……。



「まだスナノがバンド結成したばっかりの時からの大ファンだから……。メンバーの脱退とかそういうのまで見てきてるから、ちょっとね……。」



「なんだ、そういうことか。」落合くんは車椅子を止めて、私の前へと回りこんできた。



「そういうことだったら謝るよ。確かにそれだけ好きなものを否定されたら誰だって怒るよな。オレだってロックをバカにされたら怒るし……。だから、その……ごめんなさい。」



私の前で深々と頭を下げたその瞬間、背負っていたギターケースが私の頭を直撃した。



「痛っ! もう! マンガじゃんかー!」



「あ、いや、そんなつもりじゃ……。ホント、ごめ……。」



「ちょっ! ストップ!」



再び頭を下げようとした落合くんを両手で制した。



「もう、わかったから。ホント。」



ホント……バカだな、落合くん。




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