好きですか? いいえ・・・。





保健室の中は、カツカレーの匂いで充満していた。



「なんかあなたたちのせいで、インドカレー食べに行きたくなったわ……。」



まだ仕事が残っているのか、書類に目を通しながら山辺先生が言った。



並んだ2つのカツカレー。本来、1つでもゲットできたその日の放課後までは、クラスでヒーロー扱いをされるのに、それが2つもある。



「落合くん、食べないの?」



「いや、なんかこうまでして手に入れたカツカレーってどうなんだろうなって……。」



落合くんはスプーンを握ったまま、俯いている。多分、罪悪感を抱いているんだろうと思う。



「確かにね。でも、これくらいの得はあってもいいんじゃないかな?」



「そりゃ財満さんはいいよ。でも、そんな財満さんを利用してまで手に入れたカツカレー……オレは食えないよ……。」



あー、もうこの人、お人好し過ぎる! お人好し過ぎて、イライラする!



でも、そこが落合くんのいいところでもあるし、そういう落合くんのことは好きだ。




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