金木犀の君

「じゃあ、入ってきてー!」





ほのかな金木犀の香り。



見覚えのある優しい栗色の髪。
長身で華奢な身体。

彼だ。


教室中の視線が彼に注がれている。

「じゃあ自己紹介してね!」

「………藤堂瑠花(とうどう るか)です…。よろしくお願いします…。」

どこか自信無さげな、おっとりとした声。

「藤堂瑠花くんですー!皆さん仲良くしてくださいね!いろいろ教えてあげてくださーい」

先生の声は変わらずはっきりしていたけれど、クラスメイト達の視線は藤堂くん…綺麗な転校生に夢中だった。

「ねえ…かっこよくない?」
「……うん…。突然やってきた転校生がかっこいいとか漫画の中だけだと思ってた私…。」

コソコソと話し合う女子達。

「はあ?俺のがイケメンだしw」
「それは絶対無いな。」
「うん、無い。」
「お前らぁ!裏切んなよ!!泣」

言い合う男子達。


「はーい、みんな静かにー。えっと、じゃあ藤堂くん、あそこの席に座ってくれる?1番後ろの窓際の女の子の横の席、分かるかな?」


え。


「…分かります。」



待って待って待って。
どうしよう、隣の席にくる。
胸がドッドッと音を立ててる。
自分がなぜ隣に座られるだけでドキドキしてるのだろう。





金木犀の香りの香りはどんどん近く濃ゆくなっていく。
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