上京女子
新入社員
さくら花見は
先月、東京から800キロ以上離れた
地元のIT会社に就職した

新入社員なら研修真っ只中の四月後半に
東京でひとり、住む部屋を探していた


「もしもしお母さん?
部屋決まったよ!
うん、うん、大丈夫
大丈夫だってー

あ、ごめん、キャッチだ
また夜かけるね」


着信 森田社長

携帯の画面をみて花見は嫌な予感がした

「...もしもし」

「あー、もしもし?さくらさん?
明日なんやけどー」

明らかに間違ったイントネーションの関西弁と
意地悪そうな声が
さっきまでのキラキラした気分を
一気に憂鬱な気分に塗り替えていく

予感は的中だ

「月曜リリースの資料が間に合わへんねん
悪いんやけど明日こっち戻って
出社してくれるかー?」

この、くれるかー?が
問いかけでないことを
花見は入社二週間で理解した


そして明日は土曜日だ

「明日は引越しの準備が…」

「そんなん毎日ちょっとずつできるやろ
業務命令や
出社は10時とかでええから
よろしく頼むな」

ぷつ。


ほら、こちらの意見を聞くための
問いかけではなかった。
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