はやく気づけ、バカ。



「あ、いえいえ。大丈夫です。」

そういって乗り込んだ人の方へと顔を向けると、


「...あ。」

お隣さんだった。

私がそういうと、

「あ、おはようございます甘利さん。」

と、例のイケメンで現お隣さんがそれはそれは眩しいほどの笑顔でそういった。


「あ、えっと、おはようございます、えっと...。」


(...なんだっけ、名前...

お隣さんの...えっと...)

名前を思い出そうと頭を捻っていると、


「覚えてないんですか?」

「え?」

「俺の名前、覚えてないんですか?」

と、すこしムスッとした顔でお隣さんが言った。

「あ、いや...えっと...。」

そう言われ、より一層心の中は焦っていく。

(昨日聞いたばかりなのに、覚えてないなんて...!)


「言えない...!」

「え?」

「...えっ?あ、いや、あの、なんでもないです。」

つい、うっかりと心の声が漏れてしまった。

(恥ずかしい...)

そう思い、顔をお隣さんに見られないように背けていると、

「ははっ、」

と、くしゃりとした笑顔で彼が笑い、

「いいですよ、もう一度教えます。

...でも、今度は、ちゃんと覚えてくださいね?」


と、今度は小悪魔のような顔をして目の前の彼は言う。







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