【仮面の騎士王】
「まぁ、そんなものです。警備も強化されるでしょうが、式典の開催前後は、このラシェルの人口は3倍以上に膨れ上がるでしょう。招待客だけでなく、お祭り騒ぎに乗じて一儲けをたくらむ商人や、その上前をはねようとする盗賊なども増えますしね」


 盗賊、という言葉にケイトリンのむねがざわつく。


「あんなに躍起になって仮面の盗賊を捕まえようとしたのは、式典の前に治安を回復させようとしたからなのですね」


 ケイトリンの蒼い瞳が、フェルナンドを正面から見つめ返す。


 なるほど、とフェルナンドは思った。ミルドの蒼玉。この美しい瞳に見つめられて、落ちない男などいるだろうか。ケイトリンの瞳に魅せられながらも、フェルナンドは、自分の言葉にすぐさま反応を返すケイトリンを頭のいい娘だと評価し、そのことの方がよほど重要だと考えていた。今までも、甘やかされた貴族の娘にしては教会の子どもたちに靴を作るなど、少し変わった娘だと思っていたが、どうやらそれだけではなさそうだ。


 フェルナンドの瞳が怪しく煌めいた。


「他国の目もありますが、王のおひざ元であるラシェルで貴族ばかりを狙う賊の存在を許すと、諸侯からもなめられますからね」


「いいかげん限界だったのでしょう」とフェルナンドは吐き捨てるように付け足す。


「では、私が逃げたせいで、レイフ様の計画は狂ってしまったのですね。どうなさるのですか?」


 それまで間髪入れずケイトリンの質問に答えていたフェルナンドが、初めて無言になった。

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