恋する三日月
夏の終わり


「夏も終わりだねぇ。」


そう淋しげに呟き机に頬杖を付いて呟いた親友のミチルの言葉に私も“そうだねぇ”と呑気に呟いた。


でもミチルは私の声に反応を示さないで窓の外を向いたままだ。


夏も終わり、だからといって特に何も変わらず平然と毎日を過ごしている私。


他に終わった事と言ったら夏休みに海で出会った昇くんと先週短いお付き合いを終えた事くらいかな。


その時昇くんと一緒にいた奨也くんとミチルも同時に付き合って私と揃って二人も別れた。


いわゆるひと夏の恋、ってやつ?


「でも秋は秋で楽しみじゃん?

食欲の秋でしょ?読書の秋…そして恋愛の秋。」


「はははっ。結衣の場合は年中が恋愛真っ盛りじゃん。」


「何よっ、失礼ね。」


やっと笑ったミチルにそう言われ、私は大袈裟に頬を膨らませてそっぽを向く。


その方向には教室の隅の席に座っている大崎龍二いてその瞳と目が合ってしまった。


もし不可抗力で偶然に目が合ってしまった場合、うまく自然に目を反らすよね?


でも大崎の場合、そうさせてくれないような強い眼差しで私を見つめる。


本人はなんて事ないように周りの友達と話し込みながら…。


前にも何度かこんな事があった。


そして真っ直ぐに射るように見つめるその視線に私はまるで蛇に睨まれた蛙の如く固まってしまったんだ。


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