先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 あの時俺が願ったのは、このままノゾミとずっと付き合う事。

 ──もう、はっきり言う! 俺はノゾミに惚れている!

 自分の気持ちに嘘はつけない。
 一緒に過ごしてるうちに、俺はすっかりノゾミに感化された。

 それを言おうかと思っていたらノゾミは釘をさす。

「先輩、その願い、叶うまで人に言っちゃだめですからね」
「そうなのか」

 だったら俺はどうしたらいいんだろう。
 別にそれを願ったと言わなければいいだけじゃないか。

 普通にこのまま付き合おうと言えば、ノゾミはまた顔を真っ赤にしてくれるに違いない。
 鼻血を出したら本人には申し訳ないけど、それはそれで興奮して喜びの表現として俺は歓迎だ。

 そんな事を考えて、一人ニヤニヤしていた。
 その時、ノゾミは唐突に話しを切り出した。

「先輩、一億円は書留でお送りしますね」
「えっ? 書留?」

 突然その話題が出てきて、俺はまた初めての事のように驚いた。
 一億円の事をすっかり忘れていた。

 でも10キロもするような札束を、書留で送る?
 一億円がお金のように思えない。

「それと、今まで本当にありがとうございました。色々と先輩にはお世話になりました。人生最高の一時を送れました」
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