先輩、一億円で私と付き合って下さい!

「嶺、また来てくれるなんて嬉しいよ。あの時、怒って帰ったから、父も俺も心配してたんだ」

 俺はまたセイの所へやって来た。
 セイは俺を歓迎し、喜んで家にあげてくれた。

「セイ、聞きたい事がある」
「何?」

「どうやって、ノゾミと知り合ったんだ?」
「それは…… ごめん、言いたくない」

 確かノゾミも、口を重くして忘れたと言っていた。

「頼む、教えてくれ。どうしても知りたいんだ」
「あの時、偶然ノゾミに助けられたとしか言えない」

「偶然? 違う、それは偶然なんかじゃない。必然だ。頼む、教えてくれ」
「じゃあ、ノゾミに直接聞けばいいだろ」

「それができないんだよ」
「ノゾミもやっぱり言いたくないんだよ」

「違う! ノゾミはもうこの世に居ないんだ」
「はっ! なんだって。馬鹿な冗談はやめてくれ」

「冗談だったらどんなにいいか」
 俺の悲痛な顔に、セイの顔が強張った。

「嘘、嘘だろ。本当にノゾミは死んだのか? 何があったんだよ」

 俺はノゾミの病気の事を教えてやった。
 それを訊いてセイはショックで椅子に座りこんだ。

「信じられねぇ。ノゾミが死んだなんて……」

 セイの目に涙が溜まりだした。
 視線を虚空に漂わせ、震えるほどに嗚咽を漏らした。

「セイ、何を聞いても驚かないと約束するから。ノゾミと出会った時の事を教えてくれ」

 セイは唇をわなわなさせて、ゆっくりと俺に視線を向けた。
 諦めがついたように、セイは話し出した。
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