先輩、一億円で私と付き合って下さい!
それにしても、ノゾミにはお菓子作りの才能が確かにあるということだ。
将来は父親の店を継いだっておかしくない。
俺がそれを言うと、ノゾミは力なく浅く笑い、あまり嬉しそうではなかった。
まだそこまで考えてないのかもしれないが、ある程度、ノゾミの事を知ったこの時点では、俺は少しすっきりとして深くそのことには突っ込まなかった。
ノゾミにとったら、込み入った話だったので、父親の前や店の中ではその話をしたくなかった。
だから全ての真相を話した後、ノゾミは俺を店の中へと案内しようとした。
だが、俺はそれを丁重に断った。
中には父親がヤキモキして俺の存在について知りたがっただろうし、さすがに俺も父親を目の前にして、「付き合ってます」とは言いにくい。
ここは一旦逃げて、後はノゾミに任した方がいいと、俺は投げ出した。
あっさりと踵を返し、また学校でと挨拶をした後、元来た道を引き返す。
角を曲がる前で一度振り返れば、ノゾミはずっと俺を見ていた様子だった。
恥ずかしながらも手を上げ、俺はノゾミの視界から消える。
上げた後の手の行き場に苦笑し、ノゾミの事を考えれば、色んな繋がりが見えてきておかしくなってきた。
ノゾミのやる事全てに隠れた意味がある。
この先、俺はノゾミとどうなるのか。
自分の中で段々と楽しく思えていくから困りものだった。
それを素直に表現するのに、俺はまだ抵抗を感じる。
ノゾミにやられっ放しが悔しい変な意地もあった。
次、自分がリードしなければ──
翌日は土曜日の半日授業だから、また放課後ノゾミに会いに行けばいい。
その意思を固め、どう攻めてやるべきか一人でニヤついていた時だった。
駅の改札口に入る手前で、突然肩を叩かれた。
振り返れば、先ほど出会ったノゾミの姉が立っていた。
将来は父親の店を継いだっておかしくない。
俺がそれを言うと、ノゾミは力なく浅く笑い、あまり嬉しそうではなかった。
まだそこまで考えてないのかもしれないが、ある程度、ノゾミの事を知ったこの時点では、俺は少しすっきりとして深くそのことには突っ込まなかった。
ノゾミにとったら、込み入った話だったので、父親の前や店の中ではその話をしたくなかった。
だから全ての真相を話した後、ノゾミは俺を店の中へと案内しようとした。
だが、俺はそれを丁重に断った。
中には父親がヤキモキして俺の存在について知りたがっただろうし、さすがに俺も父親を目の前にして、「付き合ってます」とは言いにくい。
ここは一旦逃げて、後はノゾミに任した方がいいと、俺は投げ出した。
あっさりと踵を返し、また学校でと挨拶をした後、元来た道を引き返す。
角を曲がる前で一度振り返れば、ノゾミはずっと俺を見ていた様子だった。
恥ずかしながらも手を上げ、俺はノゾミの視界から消える。
上げた後の手の行き場に苦笑し、ノゾミの事を考えれば、色んな繋がりが見えてきておかしくなってきた。
ノゾミのやる事全てに隠れた意味がある。
この先、俺はノゾミとどうなるのか。
自分の中で段々と楽しく思えていくから困りものだった。
それを素直に表現するのに、俺はまだ抵抗を感じる。
ノゾミにやられっ放しが悔しい変な意地もあった。
次、自分がリードしなければ──
翌日は土曜日の半日授業だから、また放課後ノゾミに会いに行けばいい。
その意思を固め、どう攻めてやるべきか一人でニヤついていた時だった。
駅の改札口に入る手前で、突然肩を叩かれた。
振り返れば、先ほど出会ったノゾミの姉が立っていた。