先輩、一億円で私と付き合って下さい!
 ノゾミは驚いていたが、俺は何でもわかってるとつい大きな顔をしてしまった。
 俺の態度にノゾミはまたうろたえ困惑していたが、込み入った話だからさらりと流してやった。

「とにかく、その、セイに会ってどうしろというんだ?」
「そ、それは、セイ君が天見先輩と話をしたいと言っていて、先輩にもセイ君をちゃんと紹介すべきだと思ったんです」

 なぜセイが俺と話をしたいのか。
 セイはユメの異父姉弟で、ノゾミとは血の繋がりはない。

 だからノゾミに恋心を抱き、俺に嫉妬しているのかもしれない。
 それに俺も手助けすると言ってる以上、会うのが筋というものだ。

「いいだろう」
「ありがとうございます。でも、あの」

「まだあるのかよ」
「セイ君にはどうか気を付けて下さい」

「えっ?」
「いえ、多分大丈夫だとは思います。でも念のため」

 自分から言ってきたものの、ノゾミはどこか乗り気ではなさそうに、憂いを帯びていた。
 余程扱いにくいのかもしれない。

 セイと会った時、俺を睨んでいたあの目つき。
 それを思い出すとハッとする。
 ノゾミもその後は考え込むように黙りこんだ。
< 73 / 165 >

この作品をシェア

pagetop