S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


勢いとはすごいものだ。


称号に人生がかかっている私は、まだ消されるわけにはいかない……。



「なぜ拒むのかわからない!僕はただ、どうしてもキミと食事がしたくて……っ」



シートから身を乗り出す勢いでそう言った蒼ノ月様は心底焦った顔をしている。



「えっ?ホントに、それだけのために?」


「そ、そうだ。まずはプレゼントをしてキミの機嫌をとろうとしたが……どうもキミには通用しなかった」



ゾウの剥製、鹿の角……とどの詰まりは家を山小屋とまで言われれば、いくらイケメンだろうが王様だろうが無理な話である……。



「だからこうでもしないと、キミは僕に時間を割いてはくれないと思って……」



恥ずかしそうに顔を背けると、金色の髪をくしゃりと握っている。



お、驚いた……。


王様のような位置にいる蒼ノ月様が、こんなに困った顔をするなんて。



「よかったぁ……蒼ノ月様、すごく怖い顔をしてたから、本気で怒らせて消されたらどうしようって思って……」



安心したら強ばった力が抜け落ちて、口もとに笑みが零れるのが自分でもわかる。



そんな私の顔を食い入るように蒼ノ月様は見つめていた。

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