S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。


「もう、なによそれ。泣かせないでよ……」



傘を持たない手でごしごしと涙を拭う。


火神さんの隣では「ううっ……」と声をあげて火神さんよりも泣いている顔面凶器がいる。



「あーーーっ!!」


「……明里!?」


「大変だ!卵が!!」


「卵!?」



私は慌てて顔面凶器の足元に落ちている買い物袋を拾い上げた。



「あっ!やっぱり割れてる!!これじゃ豆腐ハンバーグが……」



そんなぁ……。

もうスーパーは閉まっちゃってるのに。



「ごめん!もしかして、さっきのせいで?」



火神さんは袋を覗いて申し訳なさそうに言う。



「お母さんと作る予定で……」


「そうだったんだ。ホント、ごめん。全部わたしのせ……」


「お弁当に入れて、明日火神さんと食べようと思って……」


「……」



火神さん?


私が振り向くと、火神さんは鼻を垂らしそうになる勢いで感極まっている。

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