S級イケメン王子に、甘々に溺愛されています。
「───お前が俺の隣にいてくれる奇跡」
まるで、宝物のような言葉をくれる。
ピタリとくっついた身体から椿の体温を感じて、たまらなくなった私は、ギュッと椿の胸に顔を押し付けた。
───ねぇ、椿。
私も、椿と出逢えたことが奇跡だと思うんだ。
小さな頃の椿が、ウチのお豆腐屋さんをバス停だと間違えてくれてよかった、なんて。
そんなことを心底思っちゃうくらい、私は今嬉しくて、嬉しくて……。
「王子ー!これ、忘れないでよね!」
火神さんが椿に向かって何かを投げた。
綺麗な弧を描いて降ってきたそれは、一輪の青い薔薇で。
「綺麗……」
宙から受け取ると、椿がその青い薔薇をそっと差し出す。
こんなに近くで見たの、初めてかもしれない。
私と椿の距離が限りになくゼロに近づいていく。
椿の瞳に、大好きな灰色の瞳に、吸い込まれてしまいそうになる。
「───好きだよ、明里」
青い薔薇でちょっぴり隠すように、椿は、優しく包み込むようなキスをした。
初めてのキスは、ひたすら幸せな気持ちでいっぱいだった。
どんなに住む世界が違っても、奇跡は起きるんだね。
───だって、奇跡は、自分で起こすものだから。