理不尽

彼女がコートを去る頃には辺りは真っ暗になっていて
宿から照らされる電気が勇逸の頼りだった。


夜目は効かないし、地面には石が転がっている。
車椅子の私には危ない道だ。


「ねぇ、そこのオネーサン大丈夫ぅ?」

気持ち悪い。こういう声は生理的に受付ないもので鳥肌がたつ。

「大丈夫です。」

少しばかり声が震える。
ズサズサと石と石が擦りあった様な足音がする。
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