ワケありルームシェア
聞いた瞬間、緋山君の顔が冷たくなった気がした。
きっと、気の所為、だよね?
「なんで、そう思ったの。」
「え、背が高い……から。」
「ふぅん。やってたよ、一応ね。」
「そうなんだ。」
「いい思い出なんて一切ないけど。」
この時の緋山君の顔は気の所為なんかじゃなくて見たことないくらい冷たかった。

「もう、なにかに一生懸命やるなんて絶対にしない。」

なにか、辛いことでもあったのかな。
あったからこんなにも冷たくて、悲しい顔をしてるんだよね。

「緋山君、辛かったら絶対に支えるから!」
「え?」
「緋山君は私に泣いていいって言ってくれたでしょ?だから、緋山君も辛かったら泣いていいからね!」
「………ありがと。」



「だけど、僕は泣かない。」


緋山君が喋り終わったと同時に授業終了の鐘が鳴る。
「じゃあね。」
「うん…。」

_______________だけど、僕は泣かない。

この言葉はどう意味なのかな。
辛い時に泣かないと、苦しいのに。
他に理由があるの?
緋山君が言ってたこと。
螢という名前は兄の名前だってことに関係あるの?

誰が、何が、緋山君をあんなに悲しそうな顔にさせてるんだろう。


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