雨宿り 晴れ気分
文庫本を片手に視線を上げた私と、何故かニヤニヤしながら目の前に座っている宮野。

ちょっと意味不明なんだけど。


「なんだよ、宮野。その“孤独少女”って」

見てみると、両脇に宮野の仲間が立っていて、私を見下ろしている。

お前ら、見知らぬ女子を囲むんじゃない。


「いっつもひとりで、教室の隅っこで本読んでるから」

指を差すな、宮野。

「え。それって……ヤバくない?」

何がヤバイのか、言ってみやがれバスケ部員A。

「ああ。それで孤独少女」

納得されたくないんだけど、バスケ部員B。


「友達はいます」

パタンと文庫本を閉じると、それをリュックにしまって立ち上がる。

ホームに出ると寒いし、ギリギリまで待合室にいようかと思っていたけど気が変わった。

立てかけていた傘を持ち、リュックを背負い直すと、改札を通り抜けてエスカレーターに乗る。

ゆっくりと上がっていくと、ホームは土砂降りで、雨の音がザーザーと凄いし、やっぱり寒い。


今日は晴れることはないのかな。


ホームの屋根から薄暗い空を見上げ、それからホームを見渡すと、雨の雫で景色が霞みがかったように見えていた。

冷たい雨を見ながら、ぼんやりと宮野のことを考え始める。









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