寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない



「いいんだよ。これから俺がいるべき場所は、セレナの隣だ」
「は……? 私の隣?」
「そう。セレナがいるべき場所も、俺の隣だ」

 テオはセレナの手をぎゅっと握りしめる。
 これまでテオは何度もセレナの手を握ってきたが、今までにない遠慮のない強さを感じ、セレナは戸惑った。
 テオの瞳はわずかな迷いも躊躇もなく、ただセレナだけを見つめている。
 手を取り合い、互いの目を食い入るように見つめていると、コホンとジェラルドの咳払いが聞こえた。

「話はまだ終わってないんだが」

 ハッと視線を動かせば、ジェラルドが眉を寄せ、テオを睨みつけていた。

「さすが、女性に人気の高い王子だな。セレナのこともそうやってすぐに手なずける。……まったく、人の娘をなんだと思って……」

 ジェラルドは顔をしかめ、ぶつぶつ言っている。
 そして、恰幅の良い大きな体を丸め、椅子の上でうなだれた。

「離宮でアメリアに任せるのとはわけが違うんだ。セレナにもどこかの王子に婿に来てもらって、目の届く場所で……」
「お父様? よく聞こえないんだけど、どうしたの?」

 セレナにはジェラルドの呟きが聞き取れない。
 テオを睨んでいることから、なにか悪口を言っているような気がしたが、ジェラルドの近くで彼の言葉を聞いたクラリーチェが首を横に振っているのを見て口を閉じた。
 すると、クラリーチェが、ジェラルドに体を向けた。

「それで、急に私たちを呼び寄せたのはどういうことなのかしら」

 はっきりとしたクラリーチェの声に、ジェラルドは顔を上げた。
 そして、セレナたち四人を見回した後、自分自身を納得させるように大きく息を吐き出した。
 緊張しているセレナの手を、テオがぎゅっと握りしめた。

「ランナケルドとミノワスターがともに繁栄していくよう、リナルド陛下と協議を重ねた結果。クラリーチェはカルロ王子と結婚し、慣例に沿ってランナケルドの次期女王となる。そして、セレナはミノワスター王国の王太子となるテオ王子と結婚し、いずれは王妃としてミノワスターの繁栄に尽力することになった」
 
部屋に響いたジェラルドの声に、セレナは言葉を失った。



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