寵愛婚―華麗なる王太子殿下は今日も新妻への独占欲が隠せない


「ああ。王子様はいろいろ忙しいんだよ。だから、次に会うまでこのかわいいセレナ姫の顔を忘れないように、近くで見ていたいんだ」

「……いつ? 次はいつ会えるの? あ……いい。なんでもない」

 セレナは自分の言葉に照れたのか、再びテオの胸に顔をうずめた。

「おーい。顔を隠すと見えないだろ? こっちを向いてくれよー」

 からかうように笑いながら、テオは肩を揺らした。
セレナはその言葉を聞いても頑なに顔を上げようとしない。
 恥ずかしさと、今日テオが帰ってしまうという寂しさで、どうしていいのかわからないのだ。
 そんなセレナの姿に目を細めながら、テオは離宮に向かって歩き続ける。
 傍らを流れる川を見れば、水鳥が上空を飛び回り、楽しげな鳴き声も聞こえてくる。

「川か……」

 ゆったりとした流れにほーっと息を吐き出し、テオはニヤリと笑った。
 そんな表情を見ることのないセレナは、何故かドキドキする胸に戸惑いながら、テオに体を預けていた。
 ミノワスター王国第二王子、テオ十六歳、ランナケルド王国第二王女、セレナ十歳。

 ふたりが初めて会ったこの日、テオとセレナの姉クラリーチェの婚約が発表され、同時にテオの兄カルロとセレナの婚約も発表された。

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