涙が落ちたあの日から
1st week

*涙の事情


プツッ

【ーー市で、車が病院の壁に激突する事故があり、1人は軽傷、1人は車と壁に挟まれ意識不明の重体。車に乗っていたのは、70代男性。現場は片側一車線の緩やかな坂道で、ブレーキ痕は無く……】





サイドボードに置かれたリモコンを手探りに見つけると、テレビのボリュームを下げた。

毎日同じ時間のニュース番組が、私の目覚まし代わりだ。




天井まで伸びる大きな窓。

カーテンから覗く朝の光。


9月も下旬だというのに、残暑の厳しい毎日に、うんざりする。

喉の渇きを潤そうと、冷たいミネラルウォーターを一気に飲み干した。




「ねむ……」


そう言ったのと同時に、



「ミャ~」


と、茶白猫ムーンが鳴いた。







「ムーンおはよー。ごはんかなー?」

私のベッドの横で寝ていたムーンが、大きく伸びをした。

成猫だけど、ちょっと小さめのムーンを軽々抱き上げキスをする。

それを拒むように、顔に置かれた前脚を力いっぱい伸ばした。



「何よムーン、チュウくらいいいじゃない」




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