エリート上司の過保護な独占愛
「紗衣……ちゃんと俺の顔を見て?」

 感情を抑えた裕貴が、優しく紗衣に語りかける。おもわず彼の言うとおりに、裕貴を見つめてしまった。

 その顔を見て、胸が締め付けられるように痛む。理由があるにせよ、彼を傷つけているのは、間違いなく自分なのだから。

 しかしここで怯んではいけない。自分のやるべきことを見失わないように、笑顔の仮面をつけた。

「課長……そんな難しい顔しないでくださいよ。確かに利用したことは謝ります。でも、課長だって少しは私との恋人ごっこ楽しみましたよね?」

「“恋人ごっこ”ね……」

 自分で発した“恋人ごっこ”という言葉に傷つく。

「そうです。“ごっこ”です」

 きっぱりと言い切った。心のキズはどんどん大きくなっていくが、乗り越えなくてはいけない。

「だから、これと、これは……お返しします」

 一歩も譲らない紗衣の目を見て、裕貴が「わかった」と言って、テーブルの上にあった部屋の鍵をポケットに入れた。

 そう仕向けるようにしたのは自分なのに、心のどこかで裕貴が「ダメだ」ということを期待していた。

(往生際が悪いな……)

 心のなかで自虐しつつ、ネックレスの箱も差し出した。
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