エリート上司の過保護な独占愛
≪運命なんて、待っていたたって転がってないわよ。沙衣は今日、私のお願いを聞いてくれた。行動したからこそ、課長との時間を持てたのよね?≫

「はい」

≪ちゃんと、行動して自分の手でつかみ取ることは、悪いことじゃないわ。そう思わない?≫

 確かに絵美の言う通りだ。今まで沙衣はずっとずっと待ち続けた。しかしそれでは何も変わらないことを、沙衣自身がこの三年間で誰よりも実感していた。

「たしかに、言う通りだと思います。でも私どうやっていいのかわからないんです」

 そもそもわかっていれば、こんなに片想いをこじらせる前に行動をとっていたはずだ。

≪そ・こ・で! 活躍するのが、昨日渡した【本当の恋を手に入れる方法】でしょうがっ! 実はさっきの〝運命をつかみ取れ〟っていうのはその本の受け売り。どうやっていいのかわからないなら、その本の通りにやってみなさい≫

 たしかにその本を受け取ったときに、参考にしようと思っていた。ただそこまで真剣だったかというと疑問だ。

 しかしこうやって、本に書いてあることを実行にうつして(絵美の助言ではあるけれども)成果が得られた。そうなると他のことも試してみる価値があるのではないかと思える。

「わかりました。私できる限りがんばってみようと思います」

≪そうそう、やってみないと何もかわらないんだからね。がんばって≫

「はい。また相談のってください」

≪いつでも、どうぞ。大事な沙衣の話なら、いつでも聞くから≫

 頼もしくて暖かい先輩の言葉と目の前の本に励まされ、沙衣はくすぶった自分の恋を成就させるべく努力することを決意した。
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