エリート上司の過保護な独占愛
 絵美のおかげでなんとか、気持ちを立て直し原料部のある五階に向かう。廊下やフロアですれ違う人に「おはようございます」と声をかけながら、デスクに座りパソコンの電源を入れた。

「おはよう」

 少し離れた席から、裕貴が声をかけた。それもいつものことなのだが、なんとなくいつもと違うように感じるのは、沙衣の気持ちが以前とは違ったものだからだろうか。

「おはようございます」

 そう言うと、立ち上がったパソコンにパスワードを入力して、早速日課であるメールチェックを始めた。

 不思議なものでひとたび、いつものルーティンワークを始めると色々と思い悩んで寝不足だったはずなのに、体が覚えているのだろうか、すっと仕事の脳に切り替わる。

 金曜の夜からのメールをざっとチェックして、急ぎのものに返信する。月曜は先週分の週報のとりまとめもあるので、何かと忙しい。

 各営業から出てきた先週の売り上げと今週の見込みの数字をまとめ、課長である裕貴に送る。それをミーティングがある十時までに仕上げる。

(あれ……これって……)

 沙衣は三人の営業担当のサポートをしているが、その中のひとり上迫(かみさこ)の持つ顧客の数字が気になった。

沙衣の入社したころは売上の上位の企業だったはずなのに、ここ最近の数字はみるからに減少していた。何度かミーティングでも議題に上がっていたが、この数字からして、今までとった対策もなんら効果がなかったようだ。
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