エリート上司の過保護な独占愛
「まさか……まぁでも、やるからには上をめざしたいけどな」

「おっ、やっと本性出したか。会社では紳士で通ってるみたいだけど、俺はお前の秘めた野心も性欲も全部知ってるぞ」

 二杯目のジョッキを開けた慎吾は、すでにアルコールがまわっているようだ。人差し指を裕貴につきつけて、力説している。

「別に隠してるつもりなんて、まったくねーよ」

 裕貴自身、人並みの欲望は備え持っていると自覚している。ただそれがあまり他人に気づかれないだけだ。
「そうか? まぁ、なんでも手に入るお前ならそんなにガツガツしなくてもいいよな。俺がお前に勝っているのは、最愛の人絵美がそばにいてくれることだ」

(また始まった)
そもそも慎吾と絵美が結婚するきっかけを作ったのは裕貴だ。慎吾が絵美に一目ぼれして以降、もう嫌というほど相談にのってきた。

(まぁ、幸せそうだかあいいか)

 いつも通り親友ののろけ話を、聞いてやる。幸せそうな顔を見ていると羨ましいと思う反面、自分にはこういった幸せは訪れることがないのだろうと、裕貴は漠然と思っていた。

「どうだ、俺の絵美は最高だろ?」

 ビールから焼酎の水割りに飲み物が変わっても、慎吾の絵美自慢は止まらない。苦笑しながら話を聞いていると、急に話題が自分自身に及んだ。

「で、お前は最近どうなんだよ。ほら、この間言ってた『会社の子に嫌われている』って話、どうなったんだ? お前が話かけると目をそらすし、気まずそうに黙り込むって言ってた子」
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