エリート上司の過保護な独占愛
(そういえば、こいつにあの話相談してたんだった)

 慎吾の婚約パーティの時の、沙衣の態度が裕貴は気になっていた。自分が話しかけると途端に顔をこわばらせ、口数か少なくなる。会社では仕事中なので、そういったことはないけれど、彼女が仕事だからと割り切って我慢しているのかもしれない。

 しかし翌日には、偶然に本屋で会いそれが誤解だったとわかった。

(わざわざこいつに話しなければよかった……)

そうは思ってももう遅い。相談だけして結果を報告しないのも筋が通らない。

「あれは、大丈夫だった。俺の勘違いだったみたいだ」

「え? 解決したのか。それでその子とはどうなったんだ?」

「どうなったって?」

 裕貴の言葉に、慎吾がじれったそうにする。

「だから、お前その女の子のこと気になるんだろ」

「は? 俺がいつそんなこと言った?」

 裕貴は慎吾の言葉に顔を歪めた。いったいどんな解釈をしたのだろうかと。

「隠さなくてもいいって。お前が女の子のことで相談してくるなんてこと、いまだかつてなかっただろ? ずばりれだけその子のことが気になってるってことだ」

 慎吾の言葉にハッとした裕貴は、そこで考え込む。

 紗衣のことは部下のひとりとして見てきた。目立たないながらも、周りのことをよく見ていて、気がつけば先回りして仕事をしてくれる頼もしい存在だ。それなのに自己評価が低いのも気になるところだった。

 しかしそれは部下として彼女を気にかけているだけで、すぐに好きという感情と結びつけるのはいささか性急すぎる。

 しかしすぐに否定できないということは、何かが引っかかっているからだ。そう考えて思い出した。

「なぁ、三谷。女性の見かけがものすごく変わるときは、何か理由があるのか?」

「は? 俺の質問は無視かよ」

「いいから、答えろよ」

 裕貴は慎吾の言葉を遮って、答えを促した。
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