風の旋律

なんでか分からないけど、いやに心拍数が増えていた。


音羽の次の言葉に、何か期待しているのか？





「私………




ショパンの練習を始めたいの。」




………………




『あ、そ…そうなんだ。

もう、気持ちも落ち着いてきたの？』



「うん！
あれから音楽室にも行かなくなってたけど、
大地お兄ちゃん…島村先生のことも、ゆっくり考えてたの。

島村先生も、あの頃は私みたいな気持ちだったんじゃないかなぁって。

酷い事いっぱい言われたのは、まだ許せてないし、怖くて震えそうになるのも治まってないけど…。


ここで、島村先生の前でショパンが弾けたら…

ちょっと大人になれるかなって、思ったんだ。」



声だけで、音羽の笑顔が見えたみたいに嬉しくなった。



『そっか。
じゃあ、毎日練習しなくちゃね。』



「え？何言ってんの祐介？」



『え？』



「音楽室行って、一発本番に決まってんじゃん。」







……………


音羽は実は、すごい肝っ玉の持ち主だったらしい。






「だから…、


一緒にいてよ、祐介。」